利益率何%が理想的?経常利益率の計算方法と業界別利益率

公開

企業がどれくらい稼げているのかの指標となる「経常利益率」。
言葉を耳にしたことがあっても、実際の計算方法や理想の数値を知らない方は多いのではないでしょうか。
今回は、経常利益率と営業利益率の違いから、計算方法や業界別経常利益率の平均値などをご紹介します。
さらに、経常利益率を分析するポイントや、営業利益率と経常利益率を改善する方法も解説するので、「経常利益率がよくわからない…」と悩んでいる方は要チェックです。

【目次】

  1. 経常利益率と営業利益率の違いとは?
  2. 経常利益率と営業利益率の計算方法
  3. 経常利益率の理想とは【業界別】
  4. 経常利益率以外も!利益率の種類と計算方法
  5. 経常利益率を分析するには?ポイント4つ
  6. 経常利益率や営業利益率を改善する方法とは
  7. まとめ

経常利益率と営業利益率の違いとは?

まずは、経常利益率と営業利益率の違いについてわかりやすくご説明します。
会社を経営するうえで重要な理由についてもお話するので、参考にしてみてください。

 

◆経常利益率とは「売上高における経常利益の割合」
経常利益率とは、売上高における「経常利益」の割合です。

・売上高:企業が製品・サービスを提供することで稼いだ売上金額の総額
・経常利益:企業の営業力で稼いだ利益に、運用利益といった本業以外の毎期発生する収益・費用を加えた金額

つまり、経常利益率とは企業の収益性を測る尺度といえます。

 

◆営業利益率とは「売上高における営業利益の割合」
営業利益率とは、売上高に対する「営業利益」の割合のこと。
「営業利益」は、本業の事業活動による純粋な利益を指します。
経常利益率と混同しやすいですが、営業利益率を分析することで本業だけの収益力を把握できます。

 

◆経常利益率を重要視するべき理由
経常利益率を重要視するべき理由は、企業が持っている本来の収益力がわかるからです。

営業力のみではなく、財務活動なども含めて導き出す経常利益率は、企業全体の収益力を表します。
さらに、経常利益率は突発的に生じた費用を含めず算出されるため、通常の経営活動による収益力も把握することが可能です。

経常利益率を分析して営業利益率と比較すれば、「本業での稼ぎは大きいけど、本業以外で生じた費用のマイナス額が目立つ」といったことも明確になるので、企業全体の収益向上につながるでしょう。

経常利益率と営業利益率の計算方法

こちらでは、実際に経常利益率と営業利益率を計算する方法について解説します。

 

◆経常利益率の計算方法
経常利益率の計算をする前に、「経常利益」の計算方法を確認しておきましょう。

【経常利益の計算方法】
経常利益=売上高-売上原価-販売費及び一般管理費+営業外収益一営業外費用

それぞれの用語については、以下の表でご説明します。

用語 意味
売上原価 販売したサービス・製品の仕入れや製造にかかった費用
販売費及び一般管理費 サービス・製品の販売に関連する費用や、一般管理業務で必要な経費
営業外収益 企業が本業以外の活動で経常的に得ている収益
営業外費用 企業が本業以外の活動で経常的に発生する費用

 

上記をもとに経常利益を求めたら、以下の計算方法で経常利益率を導き出しましょう。

【経常利益率の計算方法】
経常利益率(%)=経常利益÷売上高×100

 

◆営業利益率の計算方法
先ほどと同様に、営業利益率を求める前に、まずは以下の計算方法で営業利益を算出します。

【営業利益の計算方法】
営業利益=売上高-売上原価-販売費及び一般管理費

営業利益率は、営業利益の数値を出した後、以下の計算方法で導き出してみてください。

【営業利益率の計算方法】
営業利益率(%)=営業利益÷売上高×100

経常利益率の理想とは【業界別】

一般的に、経常利益率の理想は10%以上といわれています。

ただ、業界によって平均値は異なるもの。
以下の表では、業界別に経常利益率の平均値をご紹介するので、自社と照らし合わせながら参考にしてみてください。

業界 経常利益率(平均)
建築業 5.44%
製造業 5.28%
情報通信業 7.79%
運輸業・郵便業 2.39%
卸売業  2.63%
小売業 2.74%
不動産業・物品賃貸業 10.27%
学術研究、専門・技術サービス業 15.45%
宿泊業・飲食サービス業 8.79%
生活関連サービス業・娯楽業 4.15%
サービス業(上記に分類されないもの) 5.73%

(引用:中小企業庁 令和4年中小企業実態基本調査確報を基にグラフを作成)
(少数点第3位以下は四捨五入)

経常利益率以外も!利益率の種類と計算方法

企業の経営成績を分析するには、経常利益率以外に以下2つの利益率も押さえておきましょう。

・売上総利益率
・売上高当期純利益率

こちらからは、利益率2種類の概要と計算方法についてご紹介します。

 

◆売上総利益率
売上総利益率(粗利益率)とは、売上高に占める「売上総利益」の割合のこと。

会社の商品にどれだけの付加価値があるのかを把握するために、欠かせない利益率です。

売上総利益は、売上から売上原価を差し引いた金額で「粗利」ともいわれており、以下の計算方法で求めます。

 

【売上総利益の計算方法】
売上総利益=売上高-売上原価

売上総利益を算出したら、以下の計算方法で売上総利益率を計算しましょう。

【売上総利益率の計算方法】
売上総利益率(%)=売上総利益÷売上高×100

 

◆売上高当期純利益率
売上高当期純利益率は、売上高における「当期純利益」の割合のこと。

当該事業年度の最終的な利益率を把握するために算出する利益率です。

当期純利益とは、一定期間における企業の最終利益を示し、以下の計算方法で求めることが可能です。

 

【当期純利益の計算方法】

当期純利益=売上高-売上原価-販売費及び一般管理費+営業外収益一営業外費用+特別利益-特別損失-法人税等

さらに、売上高当期純利益率を算出したい場合は、以下の計算方法で求めてみてください。

【売上高当期純利益率の計算方法】
当期純利益率(%)=当期純利益÷売上高×100

経常利益率を分析するには?ポイント4つ

通常の経営活動における収益力を示す「経常利益率」。

計算した後は、以下4つのポイントを意識しながら分析してみることがおすすめです。

・自社分析
・期間比較
・業界平均と比較
・競合他社と比較

では、経常利益率を分析するときに注視すべきポイント4つについてご紹介します。

 

◆自社分析
まずは、自社の当期数値を確認しながら、企業の収益性を第三者目線で分析してみましょう。

売上高や各種費用の内訳を確認してみると、「売上高の向上」と「費用の削減」のどちらにより取り組むべきかが判明します。

さらに、経常利益率と共に、先ほどご紹介した4種類の利益率も照らし合わせてみると、企業の経営にあたってどの利益率に問題があるのか明確になるでしょう。

 

◆期間比較
経常利益率において、自社の当期数値と前期の数値を比較してみるのもおすすめです。

企業を取り巻く環境は日々変化し続けているため、差異を求めたり変動した部分について考察したりすることで、適切な経営戦略を立てられるでしょう。

また、前期比だけではなく、当期数値を四半期に区切ったうえで比較してみるとより詳しい結果を求められます。

 

◆業界平均と比較
先ほどご紹介した業界平均と比較するのも、分析方法の1つです。

業界内での立ち位置を確認することで、経営状況を第三者目線で把握できます。

経常利益率が自社業界よりも低い場合は、営業利益収益と営業外費用を考慮した利益が低いということなので、効率的な経営改善を行っていきましょう。

 

◆競合他社と比較
経常利益率は、業界平均だけではなく競合他社と比較するのも大切なポイントです。

競合他社と比較すれば、他企業と自社の違いが明確にわかり、「どこをどれだけ改善するべきか」を具体的に分析できます。

開示書類等をチェックして競合他社の具体的な数値と比較することで、自社の経営戦略に役立てていきましょう。

経常利益率や営業利益率を改善する方法とは

経常利益率や営業利益率が芳しくなかった場合は、以下2つの方法で改善させてみるのも良いでしょう。

・営業外収益を上げる
・営業外費用を下げる

それぞれの方法について解説していきます。

◆営業外収益を上げる
営業外収益とは、企業が本業以外の活動で経常的に得ている収益のこと。

受取配当金や利息、不動産賃料など、資産運用をして得られた収益を指す場合が多いです。

一方で、固定資産の売却といった臨時的な収益は、営業外収益ではなく特別利益とみなされます。

経常利益率や営業利益率の向上に関わる営業外収益ですが、あまりにも向上させるのはNGです。

営業外収益は本業以外の活動で得ている収益なので、営業利益よりも上回っている場合、「本業外の方が利益に貢献している」と金融機関からあまり良い評価を得られないことに。

また、営業外収益は株式市場の値動きといった外部要因の変化に左右されやすいので、注意しましょう。

◆営業外費用を下げる
営業外費用とは、企業が本業以外の活動で経常的に発生する費用のこと。

支払利息や社債利息、有価証券売却損などが該当します。

借入金の多い会社は営業外費用が多くなる傾向にありますが、もちろん会社を経営するうえで借入金は切っても切り離せない関係でしょう。

ただ、借入金に依存し過ぎても、経営するうえでリスクが生じてしまうので、無理のない削減がおすすめ。

「資本金を増やす」「必要としていない資産を売却する」などで借入金の返済を行い、営業外費用を下げていきましょう。

まとめ

今回は、経常利益率と営業利益率の違いから、計算方法や業界別経常利益率の平均値などをご紹介しました。
経常利益率とは、売上高における経常利益の割合のことで、業界によって平均値は異なりますが理想は10%以上といわれています。
財務活動なども含めて導き出す経常利益率は、企業全体の収益力を把握するために活用できる数値です。
以下の計算方法で自社の経常利益率を算出し、経営改善を図っていきましょう。

【経常利益の計算方法】
経常利益=売上高-売上原価-販売費及び一般管理費+営業外収益一営業外費用

【経常利益率の計算方法】
経常利益率(%)=経常利益÷売上高×100

関連資料(2023年9月3日閲覧)
中小企業庁 令和4年中小企業実態基本調査確報

 
 

続きを読む
記事を検索
メルマガ登録者数1万以上 セミナー情報をいち早くお届け
ご提案無料 ウィズコロナ時代に合わせて販促の「見直し」してみませんか?まずはお問い合わせください。
  • ビジネス交流会に効果的に参加するには?
    ビジネスを発展させるうえで、人脈を広げるチャンスとなるビジネス交流会に参加することは、有効な営業手段の1つです。しかしながら、何の目的もなしに参加するだけではほとんど意味がなく、貴重な時間と参加費用の無駄遣いとなってしまいます。まずは参加する目的を明確にし、自身の目的に合った方と知り合える交流会を選びましょう。
  • 業界シェアNo.1のブランドをつくるには
    ブランドとは何か? 改めてそう問われてみたとき、あなたは即答できますか。 多くの会社がブランドを構築するために、ブランディングに励んでいます。
  • 【成功事例から学ぶ経営戦略】SDGs(持続可能な開発…
    現在、多くの企業が、SDGs(持続可能な開発目標)に積極的に取り組んでいます。企業の広報担当者・販促担当者・店舗経営者にとって、自社のSDGsへの取り組みを広報やPR活動に取り入れて、顧客に向けて発信していくことは、これからのビジネスを成功に導くうえでマーケティング的にも非常に意味があることです。そこで今回は、SDGsを取り入れたあとのPR方法や社外へ周知させる方法、発信するメリット、成功事例などについて紹介します。
  • 見直そう!集客の仕組み
    「集客」はあらゆる事業を行う人たちにとって、永遠のテーマといえます。いかに継続的に集客をし続ける事ができるか、また、明日からの集客に困らない予約が2カ月、3カ月先まで埋まるような仕組みを作れるか、が事業継続の大きなカギとなりますが、なかなかうまくいかず悩んでいる事業者も多いのが現実です。今回はこの「集客」について、WebやITの側面から考えていきます。
  • サブスクリプションとは?サービスの事例やメリット・デ…
    サブスクリプションはデジタルサービスの拡大を背景に普及しているビジネスの仕組みで、商品開発やマーケティングの担当者はその特徴を知っておくことが大切です。 今回は、サブスクリプションの意味やサービス例、メリットとデメリットを紹介します。
PAGE TOP