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新型コロナウイルス感染症の新規感染者は増加傾向が続いています。感染者用の病床稼働率は全国的にひっ迫している状況となっており、状況は厳しさを増しています。2021年1月7日、政府は東京、神奈川、千葉、埼玉をを対象に「緊急事態宣言」の再発令を決定しました。また、1月8日現在、大阪府、京都府、兵庫県が、政府に対し、緊急事態宣言の発出を要請することを決定しています。
国や地方公共団体では、新型コロナウイルス感染症で事業に影響を受ける中小企業者に対して、さまざまな支援策を講じています。今回は【資金繰り支援】について概説したいと思います。
なお、この記事では、
・全体がどのような構成になっているか
・それぞれにどのような支援策があるか
・どこを調べたらいいか
ということを中心に説明します。個々の制度の詳しい内容については、参照先のリンクを張っておきますので、そちらをご確認ください。また、これらの支援策は、日々追加の施策が講じられたり、内容の見直しが行われたりしています。ただし、施策の根本は変わりませんので、この記事をもとに、それぞれの情報に当たれば、必要な情報は得られると思います。
※2021年1月7日現在の情報を基とした記事となっております。
【目次】
1.国の支援策
2.民間金融機関による信用保証付融資
3.政府系金融機関による融資
4.資料:資金繰り支援内容一覧表
5.地方公共団体の支援策 千葉県
6.まとめ
7.お役立ちサイト
経済産業省は、新型コロナウイルス感染症による企業への影響を緩和し、企業を支援するための施策をホームページでまとめてご案内しています。
また、新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様にご活用いただける支援策をパンフレットにまとめています。
この中で、国の支援策は【資金繰り支援】【給付金】【設備投資・販路開拓支援】【経営環境の整備】【税・社会保険・公共料金】という項目に分かれています。
今回は【資金繰り支援】についてご説明させていただきます。資金繰り支援の内容は、パンフレット内で以下の通りに案内されています(2021年1月7日時点)。
信用保証面の支援は、信用保証協会の通常の保証枠に、セーフティネット保証と危機管理保証という枠が上乗せされています。つまり3階建ての保証となっています。
◆セーフティネット保証
経営に大きな影響が生ずるような事象が発生した時に、それが原因で中小企業の経営が大きく損なわれるのを防ぐため、一般の保証とは別建てで保証枠を設定し、資金繰りを支援するものです。対象となる事象としては、例えば「連鎖倒産防止」や「突発的な災害(事故)」など8項目が列挙されています。
新型コロナウイルス感染症対策では、
「突発的な災害(自然災害)」(セーフティネット保証4号)
「業績が悪化している業種(全国的)」(セーフティネット保証5号)
が発動されています。
セーフティネット保証4号は、2019年の台風19号等でも発動された実績があります。今回は全国を対象に発動されており、売上高が前年同月比20%以上減少するなどの場合に借入債務の100%を保証するものです。
セーフティネット保証5号は、売上高前年同月比5%以上減少等が対象となります。つまりセーフティネット保証4号よりこの点ではハードルが低いのですが、借入債務の80%が保証対象です。
◆危機関連保証
大ざっぱに言うと、リーマンショックや東日本大震災によって生じた経済の混乱に匹敵するようなことが起こった時に行われる、中小企業支援策としての保証枠です。売上高前年同月比15%以上減少等が要件となります。
保証枠としては、セーフティネット保証と危機関連保証はいずれも2.8億円。ちなみにに一般保証枠も2.8億円です。
ご利用に当たっては、別途、金融機関、信用保証協会の審査があります。保証制度の詳細についてはお近くの信用保証協会までお問い合わせください。
融資については、「新型コロナウイルス感染症特別貸付」と「危機対応融資」が柱になります。日本政策金融公庫の制度と商工組合中央金庫(商工中金)の制度は、ほぼ同内容となっており、後述する「特別利子補給制度」と併用すると実質無利子となります。
新型コロナウイルス感染症特別貸付 | 危機対応融資 | |
実施機関 | 日本政策金融公庫 | 商工組合中央金庫 |
貸付対象 |
新型コロナウイルス感染症の影響を受けて一時的な業績悪化をきたし、最近1カ月の売上高が前年同月比か前々年同月比で5%以上減少した者。 (業歴3カ 月~13カ月の事業者には別基準あり) |
新型コロナウイルス感染症の影響を受けて一時的な業績悪化をきたし、最近1カ月の売上高が前年同月比か前々年同月比で5%以上減少した者。 (業歴3カ 月~13カ月の事業者には別基準あり) |
使途 | 運転資金、設備資金 | 運転資金、設備資金 |
担保 | 無担保 | 無担保 |
貸付期間 |
設備20年以内、運転15年以内 (うち据置期間5年以内) |
設備20年以内、運転15年以内 (うち据置期間5年以内) |
融資限度額 | 中小事業 6億円 国民事業 8,000万円 |
中小事業 6億円 |
金利 |
中小事業2億円まで、国民事業4,000万円まで ・4年目以降基準金利 |
中小事業2億円まで ・4年目以降基準金利 |
「特別利子補給制度」は、上述の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」と「危機対応融資」により融資を受けた中小企業者等のうち、特に影響の大きい事業性のあるフリーランスを含む個人事業主、また売上高が急減した事業者等に対して、利子補給を行うものです。
適用対象 |
「新型コロナウイルス感染症特別貸付」か「危機対応融資」の融資を受けた中小企業者のうち、以下の要件を満たす方 ・個人事業主(事業性のあるフリーランス含み、小規模に限る)要件なし ・小規模事業者のうち、売上高15%減 ・中小企業者のうち、売上高20%減 ※小規模要件 ■製造業その他:常時使用する従業員の数20人以下 ■サービス業(宿泊業・娯楽業):常時使用する従業員の数20人以下 ■サービス業(宿泊業・娯楽業以外):常時使用する従業員の数5人以下 |
利子補給期間 | 借入後当初3年 |
利子補給対象の上限 |
中小事業 2億円、国民事業 4,000万円 |
この他に、「マル経融資の金利引き下げ」と「セーフティネット貸付の要件緩和」の制度があります。
マル経融資の金利引き下げ (新型コロナウイルス対策マル経) |
セーフティネット貸付の要件緩和 | |
適用対象者 |
・最近1カ月の売上高(または過去6か月(最近1ヵ月を含む)の平均売上高)が前年あるいは前々年同月比で5%以上減少している小規模事業者。
・前年及び前々年の同期との比較が望ましくない場合であって、最近1ヵ月の売上高(または過去6ヶ月(最近1ヶ月を含む)の平均売上高)が、次のいずれかと比較して5%以上減少している方 |
売上高が5%以上減少といった数値要件にかかわらず、今後の影響が見込まれる事業者も融資対象。 |
使途 |
運転資金、設備資金 (コロナの影響により必要となる資金に限る) |
運転資金、設備資金 |
貸付期間 | - |
設備資金15年以内 運転資金8年以内 |
融資限度額 |
1,000万円 既存の融資とは別枠 |
中小事業 7.2億円 国民事業 4,800万円 |
金利 |
「新型コロナウイルス感染症特別貸付」「生活衛生新型コロナウイルス感染症特別貸付」「新型コロナウイルス対策衛経」の合計が4000万円まで
経営改善利率1.21%から当初3年間について0.9%引き下げ |
中小事業基準金利 1.11% 国民生活事業基準金利 1.91% ※貸付期間・担保の有無によって変動 |
上記内容が国の施策の基本ですが、これに生活衛生関係営業者には、上乗せの融資制度が作られています。
「生活衛生関係営業者」という言葉は筆者には聞きなれないものでした。調べてみると、「生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律」という長い名前の法律があって、そこで定義されており、具体的には、飲食店や食肉販売、理容、旅館等が該当するようです。個別に列挙されているので、例えば食品販売の全てが該当するというわけではなさそうです。こちらに該当する事業者には、「生活衛生新型コロナウイルス感染症特別貸付」「新型コロナウイルス対策衛経融資」「衛生環境激変対策特別貸付」の制度と「特別利子補給制度」があります。広く適用される制度ではないのでここでは詳述しませんが、該当の可能性のある方は、日本政策金融公庫にご相談ください。
経済産業省では、政府系金融機関による融資・保証のメニューを資金繰り支援内容一覧表でまとめて案内しています。こちらも合わせてご参照ください。
ここでは、千葉県の制度に触れさせていただきます。
千葉県では売上が減少している中小企業者等の円滑な資金繰りを支援するため「新型コロナウイルス感染症対応特別資金」の受付をしています。
概要は以下の通りです。
・県制度融資において、実質無利子・無担保・元金据え置き最大5年間の融資が可能
・信用保証(セーフティネット4号・5号、危機管理保証)の保証料が半額またはゼロ
・既往融資で信用保証付きのものの借り換え可能
利子補給対象融資額は4000万円までとなっています。利用するためには要件がありますので、詳細は県ホームページよりご確認ください。
その他の自治体で行っている融資制度については、対象自治体のホームページをご確認ください。
今回は【資金繰り支援】について概説しました。
支援策は日々追加の施策が講じられたり、内容の見直しが行われたりしています。必ず公的機関の発表されている情報をご確認の上、ご対応ください。
◆新型コロナウイルス感染症については、必ず1次情報として公的機関で発表されている発生状況やQ&A、相談窓口の情報をご確認ください。
▶ 首相官邸 新型コロナウイルス感染症に備えて ~一人ひとりができる対策を知っておこう~
◆全国社会保険労務士会連合会では、新型コロナウイルス感染症に関する情報を随時公開しています。
▶ 全国社会保険労務士連合会 新型コロナウイルス感染症関連情報
◆株式会社マネーフォワードが運営するこちらのサイトでは、新型コロナウイルス感染症に関連して整備された融資、保証、補助金、助成金、税制 等の支援制度から、ご自身が利用可能な制度を探すことができます。
▶ 株式会社マネーフォワード 新型コロナウイルス 支援情報まとめ
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