私(筆者)は広告審査の仕事を担当業務として行っています。前回は自分の仕事のご紹介として広告審査で求められる知識や心構え、景品表示法に関する実際にあった事例をお伝えしました。今回は薬機法(旧薬事法)の事例をご紹介するとともに、広告表現への行政による監視の強化やその心構えをお話しさせていただきます。
【目次】
1.こんな広告が回ってきました(薬機法(旧薬事法)に関わるもの)
2.強まる広告表現への厳しい眼差し…高まる広告審査の重要性
1.こんな広告が回ってきました(薬機法(旧薬事法)に関わるもの)
化粧品の広告で
「1日2回の簡単ケアで、目元スッキリ!」
「片目だけそっと塗ってみると…驚き!目がパッチリ!!」
というコピーの載った広告が回ってきたことがあります。これは…目元のシワ・たるみに対する効能効果を謳った表現であり、薬機法(旧薬事法)に抵触する可能性があるな……と私は判断しました。
薬機法第66条(誇大広告等)第1項についての解説である「医薬品等適正広告基準」の基準3の3(3)(承認を要しない化粧品についての効能効果の表現の範囲)や同基準3の3(6)(効能効果等又は安全性を保証する表現の禁止)において、美容効果によってさまざまなシワ・たるみが改善されるかのように誤認させる内容は禁じられているのです。
「塗るだけで短時間のうちに目元のシワ・たるみが改善される」と受け止められるような表現は、薬機法の観点からNGとされます。私はその旨を営業・代理店さんにお伝えしました。
2.強まる広告表現への厳しい眼差し…高まる広告審査の重要性
上で述べたものとは別件ですが、私も関わった医療機関の広告内容で、管轄地域の保健所から「医療法の観点から問題があるのではないか?」と連絡が入ったこともあります。すでに配布済みのチラシ広告だったので「全部回収か!?」と冷や汗をかいたことを覚えています(紆余曲折ありましたが回収には至りませんでした)。
最近特に実感することですが、このように保健所の他、県・消費者庁などの行政による各種広告への監視の目は強まっていますね。
2016年度の消費者庁による広告表示の調査件数は543件。処理件数は315件。「措置命令」が27件、「課徴金納付命令」が1件、「指導」が138件でした。このほか、「都道府県への移送」が80件、「公正取引協議会への移送」が6件です。また、東京都が例年行っているインターネット広告の監視事業で2017年7月、景品表示法に基づき356事業者の357件の不当表示に対する改善指導を行いました。
一方、アメリカでは「誤報やヘイトの拡散に対する是正や自主規制を行わないプラットフォーム(広告媒体)には、広告出稿の停止も辞さない」という方針を世界有数の大手企業が明らかにした…というニュースも確認されています。広告・広告主だけではなく、広告媒体企業においても社会的責任が強く求められていることを意味し、その機運は日本にも及んでいます。
現場にいて感じること、日々入ってくる情報を受けて思うことは、これから先、広告審査という仕事の重要性は高まる一方ではないかということです。私自信が今後も研鑽を積むことはもちろんですが、今までとはまた違ったアプローチの仕方で広告法務の意義を広く皆様にお伝えできていければと感じています。
広告マーケティングを強化していこうとお考えの事業主の皆様においても、コンプライアンスや社会的責任をバックグラウンドとした広告づくりを心掛けていただければ幸いです!