広告審査ってどんな仕事?
~知ってください!広告審査の現場①~
私(筆者)は広告審査の仕事を担当業務として行っています。毎日、多種多様な広告が手元に回ってくるなかで、必要な知識や能力、心掛けるべきことをご紹介させていただきます。広告マーケティング・広告コンプライアンスにつながる情報も発信できればと思います。ぜひご一読ください!
【目次】
1.広告審査って何をする仕事?必要な知識や能力、心構えは?
2.こんな広告が回ってきました(景品表示法に関わるもの)
1.広告審査って何をする仕事?必要な知識や能力、心構えは?
広告等の表示やその実態において、虚偽・誇大・不正な表現がないか?誤解を与える内容ではないか?各種法令や自主基準に基づいてチェックする仕事が、広告審査です。
広告に関連する法規は約200種類もあると言われています。また各事業者団体が公正取引協議会の協議に基づいて制定した自主規制として「公正競争規約」が、平成29年9月30日現在で104規約設定されています。それら膨大な法令・規則と個々の広告とをリンクさせ、抵触する表現がないかを見極めることが求められます。
また自社で定めた広告掲載基準に触れていないかもチェックする必要があります(アダルトなど、特定業種自体をNGとしているケースもあります)。
他にも、法令などに触れていないとしても、読者に分かりづらいと思われる内容ならばリライトを施したり、広告主の同業他社を貶めているように読み取れる表現ならば修正を図るなど、いろいろな角度からより良い広告づくりに力を尽くすのが仕事です。
と、偉そうなことを言っていますが…実際は試行錯誤と自問自答の連続です(理由は後で述べます)。
広告審査の仕事に従事するにあたって、第一に求められるのは広告に関するさまざまな法令・規則の知識と確かな理解に他なりません。社会の変化に伴って法律も度々改正されます。それらの情報を適宜キャッチし、知識のアップデートをしていく必要もあります。その上で、審査する一つ一つの広告に対しどの法令が絡んでくるか、違法性のある表現はないかを即座に判断し、決して見落とさないように掲載可否の判断をしていく能力を養わないといけません。これは、じっくり腰を据えた作業というよりも反射神経を研ぎ澄ましていかないと身に付かないものですね。
また試行錯誤と自問自答の連続と言いましたが…この仕事は決して机上で完結するものではないのです。
「広告」というものは、あえて言いますと非常に商業的で、人の欲望に直結した表現物だと思っています。こちらがコンプライアンス上リスクの高い表現の修正を求めても、クライアントや代理店営業の方々は広告としての訴求効果を当然重視します。時にはタフなネゴシエーションをする場面もあります。知識や実務的な能力だけではなく、お互いにベターな決着となるように自分と相手の感情をコントロールすることも非常に大事なんです。
頭だけじゃなく気持ちも鍛えておかないと、いい仕事はできないということですね!
2.こんな広告が回ってきました(景品表示法に関わるもの)
「受験界No.1の講師力!」
というコピーの載った塾の広告が回ってきたことがあります。
広告審査をする人間からすると、すぐに「これは景品表示法における不当表示…優良誤認だな」と認識するわけです。明確な根拠がないのに、商品・サービスの品質や規格などが競争業者のものよりも優良であると一般消費者に思わせる表示が、優良誤認表示です。「受験界」という括りがまず不明確に思われますし「講師力」というのも経歴・学歴のことなのか、合格者輩出実績のことなのか、また別の何かの指標のことを言っているのか曖昧です。それに、No.1というのはいつ時点のことを言っているのでしょうか?このような表現はNGとされます。
……といった仕事を毎日しているわけです。時には思うようにいかなかったり、他の人の助けが必要になったりしますが…。でも、誰のためにする仕事かと言われれば、読者・消費者の皆さんのためだと、はっきりと言えますね。皆さんの不利益になるような広告、皆さんを傷つけるような広告は出したくないです。
広告マーケティングや広告コンプライアンスも、究極的には読者・消費者・経済・社会の役に立たせるためにあると思っています。それが結果的に広告効果に結び付くとも思っています。
一つのマインドとして、参考にしていただければ幸いです!