広告を規制するルールとして景品表示法や薬機法(旧 薬事法)はよく知られていますが、不正競争防止法という規制もあります。不正競争防止法は著作権法や商標法などの知的財産法と似た規制をするルールですが、その規制内容はさまざまなケースにわたります。
企業間のトラブルで持ち出されることの多い法律ですので、確実に理解し安全な広告づくりをしましょう!
【目次】
1.不正競争防止法の広告規制における主要なルール
2.不正競争防止法の規制の具体的なケース
1.不正競争防止法の広告規制における主要なルール
不正競争防止法は、企業間の公正な競争を保つことにより経済の健全な発展に寄与することを目的としています。そのために、不正競争の防止やその損害賠償に関する措置などを定めています。ここでは不正競争とされる行為の中で、広告づくりにおいて特に注意すべきものをご紹介しますが、基本的な考え方は「広告の表示において他社の顧客吸引力や名誉を不当に利用したり傷付けることは禁止されていますよ」ということです。
●混同惹起行為
広く知れ渡っている他社(A社とします)の商品名・商号・商標などと同一・類似のものを広告中に使用し、読者にあたかもその広告がA社のものであるかのように混同させる行為です。
①許諾や取引関係もないのに、人気のある他社の商品表示を広告中に使用すること
②人気のある他社の商品デザインやパッケージを真似たものを用いること
以上のようなケースは混同惹起行為となるおそれがあります。
●著名表示冒用行為
広く知れ渡っている他社の商品などと同一・類似のものを自社の商品などと表示して広告に使用する行為です。
広く知れ渡っている他社の商品などの表示(著名表示)は、それだけでネームバリューといった財産的価値があるため、不正競争防止法ではその保護を定めています。許諾や取引関係もなく他社の著名表示を広告に使うことは、著名表示が持つ財産的価値に「ただのり(フリーライド)」することになるため、不正競争とみなされ禁止されます。
①有名ブランドのロゴや形状などを真似たものを販売したり広告に使用したりすること
②有名ブランド名を店名や商品名にして広告に使用すること
以上のようなケースは著名表示冒用行為となるおそれがあります。
●誤認惹起行為
広告などにおいて、商品やサービスの説明で以下の点について読者に誤認を与えるような表示をした場合、誤認惹起行為に該当します。
商品:原産地、品質、内容、製造方法、用途、数量
サービス:質、内容、用途、数量
この誤認惹起行為は、規制の内容を見ると景品表示法の不当表示にも該当する可能性があることが分かります。不正競争防止法・景品表示法の2つの規制のルールに違反する可能性がありますので、注意が必要です。
2.不正競争防止法の規制の具体的なケース
不正競争防止法の広告ビジネス上押さえておきたい規制ルールの概略をご説明いたしましたが、広く知られている著名な商品・商号・商標などを模倣して、許諾や取引関係もなく自社の広告に使うと違反となるという意味で、商標法と似た性質があります。またイラストやシンボルマークは著作権法でも保護されますので、広く知られている著名なイラストやマークなどを模倣して、許諾や取引関係もなく自社の広告に使うと違反となるという意味で、著作権法と似た性質もあります。
では、実際に不正競争防止法違反だとして企業間で訴訟が起こされたケースとして、どういったものがあるのでしょうか?
●カフェのチェーン店がオープンする際、店頭などに示すあるシンボルマークを打ち出したが、そのマークが既存の有名カフェチェーン店のシンボルマークと類似しているとして、不正競争防止法に基づいた争いがありました。「『店を混同した』というお客様の苦情もあり営業上の利益が損害された」という主張でした。
●ある医薬品メーカーが発売したビタミン剤の外箱のデザインが、競合他社の著名なビタミン剤の外箱と類似しているとして、不正競争防止法に基づいた争いがありました。「著名なビタミン剤が培った信用や評価に『ただのり(フリーライド)』しようとしている」という主張でした。
●ある食品メーカーが発売したレトルトカレーのパッケージデザインが、競合他社の既存のレトルトカレーのものと酷似しているとして、不正競争防止法に基づいた争いがありました。これも営業上の利益が侵害されたという主張です。
広告づくりにおいても同様の行為(著名なものを模倣してただのりするといった行為)をすれば、不正競争防止法の規制ルールに違反すると認識してください。同業他社の信用を損ねたり、知名度にただのりしない広告マーケティングを心掛けましょう!