文章でも、写真でも、イラストでも、一から物を生み出すというのはとても大変なことです。ましてや広告は、それらの「創作物」が組み合わさるものなのですぐにポンと出来上がるものではありません。だからといって、他人の創作物を無許可で広告に流用するのはいけません。それらは知的財産として保護されているからです。
【目次】
1.コピペ文化と広告規制
2.知的財産も広告規制の領域です
1.コピペ文化と広告規制
インターネットはさまざまな文章・写真・イラストであふれており、コピペするだけで誰でも簡単に使うことができてしまいます。しかし、当たり前のことですがそれらには創作した執筆者・撮影者がおり、創作したものに対する知的財産権を保持しています。
知的財産権はさまざまな権利の総称ですが、特に広告の規制において覚えておく必要があるのが著作権と商標権です。この二つの権利について簡単に説明します。
著作権は広告本文・写真・イラスト、またはそれらの編集物などにおいてその著作者が保持する権利です。広告や、またそれを構成する一部のコンテンツを、著作権者に無断で広告に流用したり、ネット広告としてアップしたり、またそれらを参考にした似た広告(依拠性と類似性があると言います)を発表した場合、著作権法違反となるおそれがあります。
商標権は商標を財産として守る知的財産権です。商標権を取得するには、特許庁へ商標を出願して商標登録を受ける必要がありますが、第三者が無断で登録商標(またはそれに著しく類似するもの)を広告に流用するといった行為をした場合には侵害行為の差し止め、損害賠償などを請求できます。商標とは、商品名や企業名・ブランド名、キャッチフレーズ・ロゴマーク・キャラクターなどといったものです。
要するに、他者の文章・写真・イラストや、企業のロゴマークや有名なキャッチフレーズを無断で広告に流用することは規制されており、それをやぶると知的財産権の侵害として罰せられるということです。
こういった知的財産権は、もうだいぶ社会に浸透している概念だと思っていたんですが、意外とビジネスの現場において頻繁にトラブルが見られるんですよね…。「知的財産権といったものがあるのは知っているけど、これくらいのことはしても大丈夫だろうし、広告の仕事で用いても規制されないだろう」と思われてしまうのかなと推測しています。
例えば、フリー素材集といって「勝手に使っても著作権侵害としませんよ」という形で写真やイラストがまとめられたサイトがありますが、これも但し書きをよく読むと広告流用といった商業活動に使うことは規制されていたり、アダルト媒体に掲載することは規制されていたりと、使い方によっては規制されていることもあり、うっかり違反してしまいがちなケースであります。
2.知的財産も広告規制の領域です
著作権に関することで、広告審査の現場で実際にあったケースでは、
「雑誌に紹介されました」
という名目で雑誌の表紙画像が大きく広告に載っているものがあったのですが、「雑誌の表紙」も著作権で保護され得るものです。雑誌の表紙に創作性のある写真やイラストがはっきり写っているなどした場合、写真の撮影者やイラストの作者、または雑誌の出版社に著作権があるため、無断で広告に流用すれば著作権侵害となります。
「その雑誌に自分の店が紹介されたんだよ?自分のとこの広告に使っちゃいけないの?」と仰るクライアントが多いです。しかし、雑誌内に自分の店のことが載っていることと、雑誌の表紙の著作権の問題は別です。
もちろん、広告に使う旨の許諾を著作権者から事前に得ていれば問題はないです。店の紹介もされているわけですし、著作権者としても簡単に許諾してくれるケースかもしれません。しかし、無許諾で、しかも広告の流用の仕方や演出の仕方が過度になると「やりすぎ」とみなされ著作権侵害のクレームがつく可能性は十分にあります。
商標権に関することの方が、広告の規制で言えば問題になることが多いかもしれません。
Appleやセブンイレブンのロゴマーク、CMでよく流れているキャッチフレーズを無断で広告に使うことは商標権の侵害となるおそれがあります。
商標権というものは知的財産として、権利者である企業が長年の営業努力の上培った強みであり、商標そのものに社会的・市場的な価値があります。それを無断で広告に使用したとしましょう。例えば、Appleのロゴマークを広告に大きく載せたとして、広告の読者は「このお店はきっとAppleに認められた系列店なのだな。あのAppleに認められたお店なのだから、きっと優良店なんだろう。行ってみるか」と思うはずです。実際にAppleとは大した関係もないのに、無断でロゴマークを広告に使用することでAppleのネームバリューを自分の店の業績向上に利用していることになります。こうした行為は「フリーライド(ただ乗り)」と呼ばれ、知的財産法や経済法で規制されています。
著作権にせよ商標権にせよ、技術的には誰でも簡単にコピペで侵害行為ができてしまうことが、問題を根深くしていると思います。広告の規制というフィールドで、知的財産というものがあり、他者のコンテンツの無断使用は許されないものなのだというリテラシーを多くの人に浸透させる必要があると考えています。
皆さんも、広告づくりの際の心構えとして覚えておいてください!