二重価格表示のルールと正しい広告の書き方事例

公開

販促の大学では以前より広告マーケティングにおける法令遵守(コンプライアンス)の情報として、景品表示法などの解説をしてきました。

 

今回から、実際に行政処分(措置命令)を受けた法令違反事例をもとに、リスクの高い広告表現を示し、受け手と長期的な信頼関係を結べる広告マーケティングのお手伝いをいたします!

 

【目次】
1.実例をもとにした二重価格表示の違反ケース
2.二重価格表示におけるルール

1.実例をもとにした二重価格表示の違反ケース

ある量販店の新聞折込チラシの掲載内容について、不当な二重価格表示を行っているとして、消費者庁が景品表示法の措置命令を出しました。

 

これは、量販店のセール企画の新聞折込チラシに処分が出されたものですが、

 

(当)10,000円→特別価格!レジにて5,000円

 

といった価格表示をしており、

同じくチラシ内に

 

(当)は当店平常価格です

 

と但し書きを記載していましたが、

実際は、(当)と称する金額は店舗において最近相当期間にわたって提供された実績のないものであり、販売実績のない二重価格による、景品表示法の有利誤認表示とみなされ、措置命令が出されたのです。

2.二重価格表示におけるルール

広告に二重価格表示をする際の注意点を挙げます。

 

(1)次のような場合は不当な二重価格表示に該当するおそれがあります。
●同一ではない商品の価格を比較対照にして表示を行う場合
●比較対照にする価格について実際と異なる表示やあいまいな表示を行う場合

 

(2)過去の販売価格を比較対照とする二重価格表示について
●同一の商品で「最近相当期間にわたって販売されていた価格」を比較対照とする場合には、不当表示に該当するおそれはありません。

●同一の商品で「最近相当期間にわたって販売されていた価格」とはいえない価格を比較対照とする場合には、その価格がいつの時点でどの程度の期間販売されていた価格であるかなどを正確に表示しない限り、不当表示に該当するおそれがあります。

今回ご紹介した実例は、この点で不当表示であると判断されました。

 

(3)将来の販売価格を比較対照とする二重価格表示
将来の販売価格が実際に販売することのない価格であったり、ごく短期間のみで販売するにすぎないなど、根拠が不十分であるときは、不当表示に該当するおそれがあります。

 

(4)希望小売価格を比較対照とする二重価格表示について
あらかじめ公表されているとはいえない価格を希望小売価格として比較対照価格にする場合には、不当表示に該当するおそれがあります。

 

(5)競争事業者の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示について
●消費者が代替的に購入できる最近の販売価格とはいえない価格を比較対照価格とする場合には、不当表示に該当するおそれがあります。
●一般市場で売買される普通の値段を比較対照価格とする二重価格表示については、相当数の競争事業者の実際の販売価格を正確に調査することなく表示する場合には、不当表示に該当するおそれがあります。

 

価格表示は広告において最も読者の目に触れる箇所です。だからこそ、読者をあざむくような表示を行えば信頼を瞬時に失い、行政からも責任を問われる結果となりやすい部分なのです。充分に注意を払った表示を心掛けてください。

 
 

まとめ

野澤
「10,000円→5,000円」と価格表示すれば確かにお得感が出ます。しかし値引き前の価格表示に実体がなければ景品表示法の処分を受けます。お金はとても大切なものです。だからこそ、読者をあざむかないように!
The following two tabs change content below.
株式会社地域新聞社制作1部校正校閲課 WEB広告・WEBコンテンツのチェックをメインに担当 2007年に入社。『ちいき新聞』が手掛けるさまざまな業種の広告の校正校閲に従事、また外注化も推し進め部署の生産性向上も果たす。地域新聞社運営のWEB媒体 『チイコミ!』『ちいき新聞web』『販促の大学』の校正校閲のメイン担当となり、広告の規制という観点から情報発信も行う。「校正技能検定上級(旧三級)」「ビジネス実務法務検定2級」「知的財産管理技能士」「認定コンプライアンス・アドバイザー」「色彩検定」「特別会員一種証券外務員」「ファイナンシャル・プランニング技能士」などの資格取得を活かし、攻めと守りを兼ね備えた広告マーケティングの研究を続けている。

野澤 宏樹の最新記事 (記事一覧を見る)

続きを読む
記事を検索
メルマガ登録者数1万以上 セミナー情報をいち早くお届け
ご提案無料 ウィズコロナ時代に合わせて販促の「見直し」してみませんか?まずはお問い合わせください。
  • 景品表示法違反(有利誤認)かも? キャンペーン期間延…
    当シリーズは、広告表現において実際に行政処分(措置命令)を受けた法令違反事例をご紹介しています。今回は値引きキャンペーンを何度も延長して広告し、景品表示法違反に問われたケースをご紹介します。「うちもやってる…」という方、いらっしゃいませんか?広告は不特定多数の人々の目に触れるもの。注意が必要です。
  • 特定商取引法の規制ルールを理解しトラブルを生まない広…
    特定商取引法の中で広告規制があり、なおかつ広く社会に広まっている取引類型として、通信販売と特定継続的役務提供が挙げられます。今回は特定継続的役務提供について解説します。耳慣れない言葉ですが皆さんがよく利用するお店も特定継続的役務提供に該当しているかもしれません。しっかりチェックしましょう!
  • 広告づくりで知的財産を侵していませんか?
    ~知…
    文章でも、写真でも、イラストでも、一から物を生み出すというのはとても大変なことです。ましてや広告は、それらの「創作物」が組み合わさるものなのですぐにポンと出来上がるものではありません。だからといって、他人の創作物を無許可で広告に流用するのはいけません。それらは知的財産として保護されているからです。
  • 広告の規制は広告掲載基準で知りましょう
    ~知っ…
    私(筆者)は広告審査の仕事を担当業務として行っています。審判のような役割なので、掲載可否を判断する「ルールブック」がないと仕事になりません。そのルールブックの代表的なものと言えるのが「広告掲載基準」です。広告主様も、様々な規制をクリアしないと媒体に広告を載せられません。広告掲載基準のこと、知っておいて損はありません。
  • 求人広告でトラブル回避する給与の表記方法
    求人広告に書かれているさまざまな雇用条件は、雇う者と雇われる者との「約束」です。中でも給与条件は、もっとも大切な「約束」の一つといえます。実際に支給された給与が広告と違っていたら、その広告は「うそつき広告」となります。トラブルを防ぐためにも、広告には「最低限保証された固定額」の表示をするようにしましょう。
PAGE TOP