当シリーズは、広告表現において実際に行政処分(措置命令)を受けた法令違反事例をご紹介しています。
今回は値引きキャンペーンを何度も延長して広告し、景品表示法違反に問われたケースをご紹介します。「うちもやってる…」という方、いらっしゃいませんか?広告は不特定多数の人々の目に触れるもの。注意が必要です。
【目次】
1.景品表示法の有利誤認に問われた事例
2.やりがちなキャンペーンの延長。消費者や同業他社の目を意識!
1.景品表示法の有利誤認に問われた事例
ある事業者が自社Webサイトにおいて
1ヶ月間の期間限定!
(特定の料金の)大幅値引きキャンペーン
という表示をしていました。
表示のとおり、公開から1ヶ月間の期間限定で値引きキャンペーンを行い、期間経過後にはその表示を消す手続きを行えば、もちろん問題はありません。しかし、この事業者は1ヶ月を過ぎてもまたさらに1ヶ月…と期間が延長となる形で日付の表示を変えて、同じ内容のキャンペーンを継続し続けていました。そうした実態の乏しい値引きキャンペーン表示を約5年にわたり行っていました。
消費者庁は事業者に、景品表示法違反(有利誤認)として措置命令を出しました。
商品・サービスを提供するにあたり、実際よりも有利(お得)であると偽って広告したり、競争業者の同種の商品・サービスよりも特に安いわけでもないのに、著しく安いかのように偽って広告する行為が有利誤認表示に該当します。
2.やりがちなキャンペーンの延長。消費者や同業他社の目を意識!
有効期間の日付だけを延長して、同じ内容の「キャンペーン」をあたかも通常よりお得に商品・サービスを購入できると思わせるために広告し続ける。
「うちの会社・店でもやってる…」とギクリとした方もいらっしゃるのではないでしょうか?著しく誤認を与える広告展開だと見なされれば、景品表示法違反となり処分されます。またそれ以前の問題として、広告を見た消費者からすると「いつも同じキャンペーンをしている」という違和感や不信感を与えてしまう手法だと言えるでしょう。
「サイレント・クレーマー」という言葉があります。
商品・サービス・会社自体に不満や悪感情があるが、直接クレームを言うことはせず、顧客であることを止め、さらにそれらのネガティブな情報を流す人のことです。いわば消費者を騙しているとも言える延長を繰り返すキャンペーン広告は、そうしたサイレント・クレーマーの目に非常に付きやすいものです。顧客離れや業績下降の原因となるものですので、慎むべきでしょう。
また今回ご紹介した措置命令を受けた事業者ですが、業界内においてもかなりのバッシングやペナルティを受けています。業界そのものの信頼を揺るがす行為だと非難されてしまったのです。措置命令やペナルティに従い、償ったとしても、今後も業界内でそれまでと変わらない事業のやり方を続けていけるかというと、疑問を覚えます。
自社の商品・サービスを多くの人に知ってもらうために広告を出すことは、もちろん企業活動において必要なことです。しかし、消費者の目をあざむくような広告表現は総体としてマイナスの結果しかもたらしません。
またそれに加え、行政や同業他社の目もしっかりと意識し、バランス感覚を養い、誠実な広告づくりを心掛けましょう!